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【実況者】蟹の好きな花【rtrt夢】

第6章 怖がりさえも愛おしい


 時計の針が天辺を指して日付が変わった頃、さすがに眠くなってきたのか、彼女が大きく欠伸を零した。

「そろそろ寝る? いつも通り俺のベッド使ってええよー」
「んん……ルトくんは、まだ寝ないの……?」
「うん、俺はちょっと編集作業してから寝よっかな」
「そ、そっか」

 本当は俺も既に眠くて編集なんて出来る元気はないのだが、もじもじと恥ずかしそうに俯く彼女が見たくて、少し嘘をついてしまった。

「あれ〜、どないしたん、菜花ちゃんはお化けが怖くてひとりじゃ眠れないんかな〜?」
「うっ」
「ふふー、しゃあないなー! 今日もいっしょにねんねしよ」
「い、いいの? 編集作業は大丈夫? 私、終わるまで待ってるから、」
「へーき、へーき。明日休みやし、午後からやるわー。ほらほら、さっさと寝ましょ」

 パソコンの前を片付けて、お互いに歯磨きなど寝る支度を済ませる。
 俺は一足先にベッドの中へ潜り込み、掛け布団をめくって、おいでおいでと彼女を手招きした。遅れて寝室に入ってきた彼女は、安心したようにふやけた笑みを浮かべて、素直に俺の隣へ寝転がった。掛け布団をかけてやるついでに、ぎゅう、と彼女の柔らかい身体を自分の腕の中へ引き寄せる。苦しいよー、なんて小さな声が聞こえてきたけど、クスクスと笑う声は楽しそうだ。
 彼女は甘えるように額をすりすりと俺の胸元に擦り寄せてきて、何だか堪らない気持ちになってくる。彼女のつむじに鼻を近づけると、同じシャンプーの匂いがして、不思議なほど心が満たされた。あったかいなあ。

「ルトくん、あったかいねえ。同じ石鹸の匂いがして、安心する……」

 どうやら彼女も俺と同じことを想っていたらしい。やっぱり長年連れ添ったぶん気も合うんやねえ、なんて。

「どう? もう怖くない?」
「んー……まだ、変な夢、見そうで、ちょっと怖いけど……」
「大丈夫やって、夢ん中でも俺が菜花ちゃん、ぎゅーってしたるからな」
「ふふ、たのもしいなあ……。ね、あたま、なでなでしてくれる?」
「うん、ええよー」

 良い子良い子、とご所望通り彼女の頭を撫でてやる。普段は俺の方が彼女に甘やかされてばっかりだけど、こういう時は俺が彼女を甘やかしてあげられる。いつもより甘えたになる彼女が可愛くて可愛くて。だから、俺はわざわざ彼女のホラー鑑賞に付き合ってしまうのだろう。
 
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