第3章 まるで恋愛ゲームのような、
受験勉強の息抜きに、ゲーム好きの私はとある動画配信サイトで"ゲームプレイ実況動画"なるものをよく見ていた。
見始めたきっかけはあんまり覚えていないけど、確か高校一年生の頃、好きなゲームの二次創作のイラストなどをパソコンで検索していた時だったか。偶然、私の好きなゲームがタイトルの動画を見つけて再生したら思わず魅入ってしまった。そんな世界を知ってからは様々なジャンル、色んな人のゲーム実況を見ている。
その中でもお気に入りの実況者さんが"レトルト"さんという、とっても楽しそうにゲームをプレイする鼻声が特徴的な実況者さん。
(ちょっとルトくんに似てるんだよね)
彼とよく似た鼻声に関西弁はとても親しみやすかった。ハンドルネームの由来も、幼馴染みの彼が小学生の頃から好きなゲームのキャラクターだった。実況してるジャンルの好みも同じだ。それはつまり、私も同じような好みであるから、好きになるのは必然と言える。
彼にもこの人の存在を教えたかったけど『ゲーム実況って知ってる?』と試しにメールで聞いてみたら1日ほど間を空けて『知らん』と返されたきりで、まあ無理にオススメしなくても良いかなってこの趣味については『そっか、結構面白くて好きなんだけどねー』ぐらいの話しかしていない。
こんなにもよく似ているから、実はレトルトさんと幼馴染みの彼は同一人物で、もしや私にゲーム実況してることがバレると少し照れ臭いから適当に誤魔化した──なんて、考えたこともあったけど、当時の私は恥ずかしがり屋の彼が「実況なんて人に目立つことやってるわけないだろう」と内心の冗談で済ませてしまい、核心にも近づいた名探偵の推理を打ち切った。今思えば、鈍感過ぎにも程がある、と我ながら思います。
受験勉強が煮詰まった頃、レトルトさんの新しい実況動画が丁度良いタイミングで上がって来た。
休憩がてら、あったかいココアでも飲みながらまったり見よう。続き楽しみにしてたんだー。
『はぁーい、皆さん、こんちゃーす! レトルトと、申しまーす。じゃ、早速続きやっていきましょー』
ふふ、やっぱりこの鼻声、可愛くて癒されるなあ。