第1章 毎日
シンはマリエの持っている青いワンピースを手に取りマリエに合わせてみた。
「マリエさん可愛い」
「ぅ…そんなこと言われても、やっぱり赤い方にするって」
「でも好きなんでしょ?僕がホショーするって 。あと写真撮らせてっ」
着てみて着てみて、とあっという間にシンによって着替えさせられてしまった。どうもこの少年はこういったことが慣れている。立ち鏡の前へと手を引かれ連れてこられたものの、俯いたままのマリエの顔にシンはそっと手を当てて、ゆっくりと鏡を見るよう促した。
「ほら、いいじゃん」
「私、そんなに目ぱっちりしてないし、髪も黒くて重いから似合わないって」
「たまには僕のいうこと聞いてくれてもいいじゃん」
「たまにって…いつも私が負けてる気がするよ?」
「じゃあ、明日その服着てこうね。バックとかも僕が決めるーっ」
マリエが陣取っていたクローゼット、次はシンが陣取り漁っている。元々はマリエの母も一緒に暮らしていたために洋服やバック、シューズ、化粧品なども数多く揃えてある。
だいたいの品物は誰かからの贈り物ばかりのようだが、母は大した興味もなくそのままクローゼットにしまわれている。マリエの所有するものもあるにはあるが、母親のものがほぼ全て占めている。
「僕ってセンスの塊かな」
ニンマリと子供らしい笑顔を浮かべるシンの見つめる先には、いつもはストレートにしている髪をゆるく巻いてメイクもピンク系に甘く仕上がっているマリエだった。シン曰く見様見真似で身につけた技術だとか、シン自身もオシャレなだけある。洋服もアクセサリーなど一式揃えて身につけて、なんだか普段の自分じゃなく女優として飾られた自分、そんな感じがしている。