第1章 毎日
「シンちゃん、私の専属メイクさんならない?」
「やだ」
「即答しないでよっ。…でも私意外とイケるのかな」
この姿で外を歩くにはまだ居心地悪く感じてしまうが、自宅で楽しむくらいならいいのかな、とクルクル回りながら鏡をチェックする。
(昔からこういう服はレイラって勝手に決めつけてただけなのかな)
おそらくあの人はこういった可愛い女の子が好きなのではないか、と常々思っている。そんなに女っ気感じないタイプなのに、いつのまにかレイラと付き合っていたのだ。
(今更、なんだけどね)
自傷した笑みを浮かべ、シンのいる方へと振り向けば、ふわっと髪も合わせて広がった。そんな何気ない動作にシンは心を鷲掴みにされたような感覚に落ちた。
「マリエさんって、悲しげな顔してた方が、ずっと美人」
「あんまり嬉しくないよっ」
怒ったような、だけれど笑っている。コロコロと表情を変えるマリエにシンも可笑しくなったのか釣られて笑ってしまった。
「明日会う人もマリエさんにイチコロだね」
シンのおかげで新たな自分を見つけれたマリエは、ノリノリにシンの携帯に収まることになった。そしてその写真はずっとシンのアルバムに残っている。