第1章 毎日
レイラが色々と調べ個室で使えるレストランを予約してくれたため予定はスムーズにまとまり、トラネスとマリエの食事会は明日行われる。とても楽しみにしているレイラは食事会が近づくにつれて、頻繁にマリエにメールをしていた。
「マリエさん、ケータイ光ってるよ」
「気にしなくていいよ、最近ずっとなの」
「なんかめずらし、僕気になるっ」
「興味持たなくていーのっ」
今にも飛びつきそうなシンを抑え、カラフルにライトが点滅する携帯電話をカバンの底へとしまいこんだ。そして思い出したかのようにマリエはクローゼットを漁りだした。
「ねぇシンちゃん、どっち似合うかな」
「んー、赤の方がいいかなぁ」
シンが指したのは赤といってもワインレッドの大人っぽい雰囲気のワンピース。もう1つは青色のふんわりとスカートに膨らみがあるもの。
「マリエさんのブランドの服って大人っぽいものと、子供っぽいものと極端だよね」
「子供っぽい言うな」
大人っぽいものはマリエの母親をイメージしたもの、子供っぽいと言われたのはおそらくレースや柄物などいかにも女の子!というようなデザインのことを言っているのだろうと、マリエは思った。
「…実はこういう方が好きなんだ」
「べ、別にいいじゃない!可愛いの好きでっ」
ずっと小さい頃からシンプルなものを着て、柄の入ったものやリボンなんかついた洋服などほとんど着たことがなかった。着たとしても学芸会の演劇、卒業式などの行事ばかり。
女優としてもドラマでは学園もので制服でリボンが付いていたくらい。他に出演したものやモデル撮影があったのも、やはりシンプルだったり大人っぽいもの、スタイルがよくわかるようなデザインだったりだ。
憧れてはいるが、レイラのように可愛く着こなせる自信がなかった。童顔とよく言われるが、だからといってそういう洋服を着ることはない。20もすぎて、今まで着たことのないものを私服として取り入れるのはなかなか難しい。