第1章 毎日
(まだ好きなんだ…忘れられないんだね)
心配そうに様子を見るしかできなかった。レイラには、ずっと片思いしている気持ちもそれを捨てられない気持ちも痛いほどわかった。
「大丈夫、もう泣かない…ように頑張る」
「なにそれ?嬉しい時だって辛い時だって泣いていいんだよ?」
「なんかレイラの方がお姉さんみたいなんだけど」
「もうよちよち歩きの私じゃないよっ。レイラお姉さんにお任せ!!」
どんっと自分の胸を叩くレイラ。さっきまでの暗い空気はどこかへ去ってしまった。マリエはカップに口をつけ、高ぶりそうだった感情と一緒に温くなった紅茶を流し込んだ。
「そういえば、トラネスにナオキもいるんだよね?」
トラネスのメンバーの名前は、みんなマリエの知っている人たちだ。少しだがレイラに話したおかげで当時の友人の名前を口にしても、もう大丈夫だった。
「うん、元気だよ!マリエに会うの自慢したら、羨ましがってたもんっ。
…それにタクミだって」
タクミの名を恐る恐ると口に出したレイラ。そっとマリエの表情を伺えば、思っていた表情とは違うものをしていた。
マリエは懐かしむように笑っていた。
「そっか、みんな来たんだ」
「あのねマリエがよければ、みんなで食事しない?あっ、でも忙しいよね!?なんかまたドラマに出るんだっけ?私ちゃんと見てるんだよ!」
「忙しいけど、私はまだまだだよ。今回のドラマもちょっとした役だし。タクミたちもいずれ会うことになるもんね、ご飯食べてみるのもいいか」
「あと携帯ね、アドレスと番号そのままのをまだ持ってるから、これに連絡してくれていいからね?」
「だからっそうなら返事してって!もう無視しないでよ?無視したらタクミにチクるってやる!」
「うっ、それだけはやめて、タクミのもずっと返事しないでそのままだから、怒られる…」
「みんな心配してたんだから!変わってなくてよかった」
「レイラも大人っぽくなったな〜って思ったけど変わってないね」
「一緒だね!」
次会うのはみんないる時だね!と去り際に声をかけるレイラ。しっかりとマリエは頷き、帰ることにした。携帯電話は二機持っている。今、主に使っている物と、あの頃使っていたのと同じアドレスと番号のもの。いつか連絡がくると信じて待っている。