第1章 毎日
シンは目を細めて笑っていた。そんな彼を見ていると自分もおかしくなって2人で笑っていた。何でもない話を続けていると、いつの間にか日が沈んでいた。
「マリエさんって、こっち来たの高校生の時だっけ」
「確か高3なったころかな、ばたばたしてたからきちんと覚えていないよ」
「自分のことなのに」
「う・る・さ・いっ」
ぎゅっと近くにあったクッションを押し付けると、すぐに押し返されてそのまま押し倒されていた。見た目は少年でも力は男だった。
「負けた~」
「マリエさんは女の子だからね」
「女性だもん」
「もうちょっと色気欲しいな」
「もーっ!」
クッションを手放し両手でシンの頬を抑え、そのままぎゅっと押してやれば、イケてる彼の顔もすこしおまぬけな顔になり吹き出してしまった。
「ぶっシンちゃんかっこわるい」
「えいっ」
マリエの頬をつまみ、そのまま上下左右と引っ張られ彼女は涙目になった。痛いと言いながら彼の手を上から抑えると自然と目が合った。
「どうする」
「…ごめん」
「じゃあ、一緒に寝よ?」
こてんと首を傾げ年相応な柔らかい表情でシンはマリエを包み込んだ。しかしマリエは何も言えずただ頷くだけだった。
シンとの関係は毎回こんな感じであった。じゃれるだけじゃれて後は眠るなり食事するなり帰らせるなり。いつ彼のことを聞いたのかは覚えてないが、芸能界の中でもランチやディナーをよく一緒に食べる女性が一人だけいて、その人が教えてくれたのは覚えている。
初めて呼んだときはこんな美少年が来るなんて思わず驚いた。そして向こうもまさかあのマリエがドアの向こうにいるなんて思っていなかったのか、お互いに口をぽかんと開けて突っ立っていたのは、今でも思い出して笑ってしまう。
「変われるかなって、変わりたいって思ってるんだけど」
「無理しなくていいし、僕はこのままでいいんじゃないかなって思ってるよ」
「そう?うん、もう考えるのやめる。寝る!
あっ、お金先に渡しておくね、好きな時に帰って」
「うん、わかったよ」
お金を渡した後、一緒に広いベットで眠りについた。ちらりとシンを見ると彼はすぐにわかってくれたのか、毎度のことで流れ作業なのかマリエが眠りにつくまで抱きしめてくれる。