第2章 黒の教団
意識が浮上し、目が覚める。
目を開けた先に見えるのはすっかり見慣れてしまった黒の教団にある自室の天井。
「はぁ…。ホントどうにかならないかしらこの癖」
心が不安定になると決まって見る夢。
私が「何のためにここにいるのか」、それを思い出させるかのように。
(わかってる。私がここにいるのは千年伯爵を討つためだ)
イノセンスを持たない、ただの探索部隊員でしかない私にはその手段はないけれど。
「…とりあえず食堂いくか」
マイナスの方へ傾く思考を切り、食堂へ行くため着替え始めた。
軽食を済ませ、科学班フロアへ顔を出すと数人の姿が見られなかった。
「あの。リーバー達は…」
近くの科学班員に声をかければ、彼らがいる場所を教えてくれた。
「班長達なら今指令室にいるよ」
「ありがとうございます」
指令室ということは何かあったのだろうか?少し疑問に思いながらも指令室へと向かう。近づくにつれて何やら騒がしい声が聞こえてくる。
こっそり覗いてみると、そこには門番の前に佇む白髪の少年がモニターに映し出されていた。
(あの子…)
どこかで見たことのあるような感じがした。
その白髪も見た目の年頃としては特徴的だが、何より目を引いたのは左腕。彼のは赤黒く変色していたのだ。
(赤黒く変色している左腕…、ずっと前に見たことある気がする…)
それに彼の傍らにチラリとみえた金色の小さなゴーレム。アレは恐らく"あの人"のゴーレムのはず。
指令室を覗いただけでその場をあとにすると、天音は門番のゲートへと足を向けた。
『ブーーー!!こいつアウトォォオオ!!』
ゲートへ向かっている途中、突如耳をつんざくように教団内に響く門番の判定。
「違う。多分あの子は敵じゃない…!」
焦る気持ちを抑え、白髪の少年の元へ急いだ。