第8章 マテールの亡霊③
すると、どこからかビキビキとなにかに亀裂が入るような音が聞こえてくる。――嫌な予感しかしない。
「?なんだろ。キシむような音が…っ!?」
突如、アレンが座り込んでいた場所が崩れ落ち、そのまま下へ下へと落下した。
そう。マテールの家は長い年月のうちにモロくなっていたのだ。
しかし、発動したままだった左手が途中で金属の何かに引っかかり宙ぶらりんの状態になる。
「何だここ?町の下にこんな広い空洞があったのか…」
引っかかっていた金属がアレンの重さに耐えられなくなり、バキッと音を立てて折れてしまい、再び瓦礫の上へ落ちた。
痛みに耐え、涙を滲ませながら横を見ると――
「!これは…」
「地下通路?」
老人グゾルと少女ララをそれぞれに抱え、神田と天音は廃屋の上を移動していた。
「この町には強い日差しから逃れるための地下住居があるの。迷路みたいに入り組んでて、知らずに入ると迷うけれど…出口のひとつに谷を抜けて海岸線に出られるのがあるの」
「そうよね…確かにここは日差しが強いもの。そういうスペースがあったって何ら疑問はないわ」
天音の言葉にうなずきララは続けた。
「あのアクマという化け物は空を飛ぶ…地下に隠れた方がいいよ」
ララの提案に賛同したらしい。神田は廃屋の上から下へ降りた。
下に降りたところで神田の無線ゴーレムが鳴った。
「トマか。そっちはどうなった?」
『別の廃屋から伺っておりましたが、先程激しい衝撃があってウォーカー殿の安否は不明です。あ、今アクマだけ屋内から出てきました。ゴーレムを襲っています』
「なんでゴーレムを襲うのよ…子供か…」
無線の声を聞き、天音は呆れた声を漏らした。
「わかった。今俺のゴーレムを案内役に向かわせるからティムだけつれてこっちへ来い。長居は危険だ」
「今はティムの特殊機能が必要だわ。気を付けてきてくださいね」
『はい』