第6章 マテールの亡霊
用意された個室に向かい、エクソシストである神田とアレンは室内、探索部隊である天音とトマは廊下へと腰を下ろした。
アレンは早速先程疑問に思ったことを神田に質問しているようだ。
「天音殿、今回もその刀持ってきてるんですね」
「ぇ…ええ、まぁ」
両親が遺してくれた形ある形見。無意識のうちにいつでも肌身離さず持ち歩いている物。
「私の両親が遺してくれた形ある物…なので。中々手放せないんです」
膝を立て、刀を抱き込むようにして座っている天音の姿はそれに縋っているようにも見えた。
「…そうでしたか。大切な物なんですね」
「…そう、ですね」
汽車の心地よい揺れに眠気を誘われる。
(眠い…)
「これは…」
神田が呟いたのに気づき、トマが室内へと声を投げた。
「そうでございます。トマも今回の調査の一員でしたのでこの目で見ております。マテールの亡霊の正体は…」
そして天音の意識はそこで途切れた。
一方、マテールの地の小部屋では、金髪の少女と老人、2人の探索部隊がアクマから身を隠していた。
「どこにいるんだーい?マテールの亡霊ちゃあーん。まったく迷路みたいなところだなぁ、狭いし!でも宝探しみたいで楽しい♡亡霊ちゃあーん絶対見つけるぞぉー」
徐々に近づいてくるアクマの声。恐らく見つかってしまうのも時間の問題だろう。
「ララ逃げろ…」
「ううん、平気よ。グゾルと一緒にいる。私を受け入れてくれたのはグゾルだけだもん」
しかし。
ギィーという長い年月を思わせる軋む音を出して開いていくドアの先。そこには…
「みぃつけた!」
『!!』