第5章 番外編① 彼の強引さが"善"となる…?
爆豪くんは、何に対して怒っていたのか知らないが、満足したようで、私を寄せている手を弱めた。
私と爆豪くんの身長の差はだいたい10センチ程。ちょっと私を上に向かせちゃえば、すぐ顔が合う。だから、逃さぬよう押さえていた手を弱めるだけでいいのだ。
「っ!……はぁ……はぁ……ヤバ、ぃい…窒息死ぃ…」
窒息死などと、大げさに言っているように思うかもしれないが、本当に、塞がれて息が出来なかったのだから、仕方ないのだ。
私には耐性も何もないのだから、『鼻で息すればいいんじゃね?』なんていう考えは、自分は実際、出来ないと分かっているから、こうなることしか出来ないんだよ…!
「そこまでキツくないだろ」
私をこんな状態にした当の本人は、普通にそう言ってくる。
「私はあんな状態で、息なんて出来ないんだよ、爆豪くん…!」
「俺が解決できる事でもねぇだろ。」
「だ、だってぇ…」
確かに、それはそうなんだが……と、言える事も無くなった私は、まだ皆に会いきれていないことを思い出した。
「ねぇ、爆豪くん。私ちょっと、皆と話して回りたいから、一旦ここを離れるね。」
「はぁ…?なんでだよ…。……もういい、分かった。一周したら、戻ってこい。あと、ヘンなヤツに近づくな。」
「ありがとうね!じゃあ、また後でね〜!」
何かを渋った爆豪くんだったが、諦めたようで、私を開放してくれた。
私はクラスの皆と話すため、会場内を回りだした。
皆と一通り、会うことができた私は、『戻ってこい』と言われていた爆豪くんのもとへと、行こうとしていた。
……が、見知らぬ人から声を掛けられていた。
「私と踊っていただけませんか?」
「ぅえ?」
その人は、私よりも身長が20センチ程高く、綺麗な顔で紳士的な服を着ていた。
「え、ええっと……」
気付けば洋風な音楽が流れ、辺りの人はおとぎ話の舞踏会のように、しとやかに踊っていた。
目の前の紳士的な方は、私の返事を待ちながら、私に手を指し延べている。
「あ、あの……その……」
私はどう返したら良いのか分からず、その返事を返せないでいた。
しどろもどろする私。そんなとき……
肩をガッと抱き寄せられ、上から睨みつけるような声がした。
「コイツは俺と演るって、そう決まってんだよ。」