第5章 番外編① 彼の強引さが"善"となる…?
「っ⁉ば、爆豪くんー⁉」
少し上を見上げれば、その声の主の正体が分かった。やはり、爆豪くんだった。
爆豪くんは、向かいの男性を睨む。男性は少し驚いたようで一言告げると、そそくさと人混みに紛れてしまった。
「……そうでしたか。では、私は別の方を探すとしましょう。それでは。」
私はその人が去っていったのを見届けると、爆豪くんと向き合い、お礼をする。
「あの……爆豪くん、ありがとね!なんか、知らない人に絡まれちゃって……」
すると、爆豪くんは頭を撫でてくれる。
「……大丈夫か」
その顔が、きっと私にしか見せないだろう、優しい、心配してくれている顔だった。
「あ…うん、大丈夫。」
私はやっぱり、そういうのには激しいようで、顔の近さや目が合っていることが大変で、下を向こうとする。
だが、それは出来なかった。私の頭は爆豪くんによって、固定されたからだ。……顎クイというやつだ。
私はさらに恥ずかしくなり、瞳だけでも……と、爆豪くんから焦点をズラす。
「なんで、目、逸らすんだよ」
分かっているであろうことを爆豪くんは聞く。
「え、あ……た、耐えられない、から…」
私は頭が上手く回らない中でも、最低限の言葉を出した。
「何がだ?」
「その…爆豪くんと、キスしたり…目が合ったり……。そういうのが恥ずかしくて、耐えられないから……なんだけど…」
「ちゃんと、言えたじゃねェか。」
そう私につぶやくと、爆豪くんは私の頭を撫でる。グシャグシャという荒い感じのではなく、優しく撫でてくれた。
んふふ。爆豪くんって、私にすごく優しくしてくれる。けど、Sっぽいっていうか、イジワルっていうか………。
思わず気付かない内に、私は笑顔になっていた。
思えば、付き合いたての頃は『凄いけど、仲良くするのは難しそうな人』って思ってたし、好きっていう気持ちもそこまで無かった。
でも……ちゃんと今は好きだ。
優しくて、格好良くて、私を想ってくれて___。
私は、爆豪くんに抱き付いた。良い匂いがする。顔を見上げて、爆豪くんに言う。