第4章 一冊目と奇襲
はぁ…。
やっと、土砂崩れゾーンを抜け出せた。本当に大変だった。まあ、今はこんなことを思っていてもしょうがない。
私はヴィラン大群の本陣があると思われる、中央へと向かって行った。
中央では相澤先生と白髪の少年が戦っているようだ。ふと、その場から見ていると、相澤先生の腕が卵の殻のようにポロポロと、剥がれ落ちている。
心配の気持ちと、恐くなった私は燃やしてしまおう、せめて神経が麻痺する程度に…と思ってしまい、白髪の少年に向かって個性を使った。
白髪の少年は相澤先生を離した。私に気がついたみたいで、
「お前…何の個性だ?体に力が入らない…!」
と、睨みつけてきた。少ししか見えていない顔からでさえも、恐怖を感じた。だめだ。何かされる。
「……。」
私はやめてとも何とも、言う言葉が出なかった。やめてと言ったところで、変わらないと思ったからだ。
私は昔から、自分の言った事に対して何か言われるのが怖くて、周りが騒がしくとも注意に踏み出せなかったし、目立って、責任重大な係なども、
「なんで先生に聞いてないの?」
「指示出してよ!」
などと、責られるのが怖くてあえてしてこなかった。
だから、この状況は余計に恐かった。私が何かしたから言われ、責られ、この場合は壊される。しかもあんな、と私は相澤先生の傷を思い出す。あれでは、ちゃんと治るかわからない。
どんどん恐くなってゆく。あの少年に、自分の思いに。
私は悪い妄想ばかりして、今、自分が置かれている立場に気付けなかった。いつの間にか私は、少年に地面を背に首に手を当てられているようだ。
私はもっと気持ちが大きくなるというのに、考えてしまった。首を絞められる?恐らく破壊系であろう個性を使われる?
どっちにしろ、すごく恐かった。
私はせめてもの思いで、毒の濃度を上げていった。と同時に首に当てられた力が強くなる。
もう私の中は一つの感情にしか成れなかった。そしてそのときには、頬に涙がつたっていた。
恐い…!