第4章 一冊目と奇襲
私が涙の最骨頂になっているとき、私は微かに風を感じた。さっきまで流れていなかったのに。
少年の手が緩まった。意識が向こうへ向いたからだろう。私はその隙間に逃げ出し、少しの距離をとった。
誰もが見ているその方を私も見る。ここにいるみんなが、待ち望んでいたであろう光景がそこにはあった。
オールマイトが来た。たった一人の登場で歓声が上がるなんてすごいことだ。さすがだと思う。
それからは速かった。オールマイトは少々ボロボロになりながらも、必死に私達を守ってくれた。
あの少年とヴィランの大群はその後、去っていった。
その後、先生方·警察の方々が来てくださり、私達の身の安全を確保してくださった。本当に、助かったと思った。
私はそのとき、クラスのみんなのもとに駆け寄った。こうやって、話せることに涙が出てくる。今さっきまで、恐怖のど真ん中に居たのだから。
そんなときさらに、
「炎火さん。大丈夫でしたか?」
「炎火、無事か?」
「はなちゃんー!」
なんて心配して、声を掛けてくれた。
そのことにも嬉しさを感じて余計、涙が溢れ出る。
「みんな、ありがとう…!私は大丈夫だよ。それよりみんなの方が大丈夫なの?」
私がそうお礼を返すと、みんなは口を揃えて、大丈夫!と言った。
その日はみんな家に帰り、心配される中で、緊張しながら床に着いたのだった。
夜、私は、家に帰った後もみんなとスマホで連絡を取り合っていた。
LINE1-A女子グループにて。
『みんな大丈夫ー?私は全然元気ー!』
【私も!他は?】
『大丈夫だよ〜!』
『みなさんがお元気で良かったですわ。私も元気ですわ』
など、みんな元気のようで、少し安心した。その後は思い付きの話をして一旦別れた。
今度は彼氏の爆豪くんに話を出してみた。
【爆豪くん、大丈夫?】
【あ。私は怪我とかも無くて、全然元気だよ〜!】
すると、簡単な返事が返ってくる。
『俺が怪我なんてする訳ないだろ』
『お前が大丈夫ならいい』
サラッと返ってくる言葉に少し、私は赤みが増す。
【そっか、なら良かった!ありがとね。】
そのフキダシには既読、とだけつく。
【じゃあ、おやすみ〜。】
この一文を、私はポンっと、スタンプとともに送り出す。
返ってきた言葉は『おやすみ』だけだった。
私は歯磨きなどの寝る準備を済ますと、すっきりと夢に入っていった。