第2章 フーシャ村の出会い
「な~あ~?マキノさんまだかよぉ~?俺ら暇じゃねェんだけど!!」
黒髪の少年が気だるそうにカウンターの椅子でくるくると回る。
そばかすが少し目立つが、幼いながら鍛えられているのか体格が良く、精悍な顔立ちをしていた。
「ははっ!せっかちだなァエース。うまいもん食わしてもらえるんだしいーじゃねェか。」
「うるせェなぁ~サボ!!俺は待つのは嫌いなんだよ!!」
サボと呼ばれた少年は、カウンターで行儀良く座っていた。くせっ毛の短い金髪に大きなシルクハットを被っている。
中々の美少年だが転びでもしたのだろうか、にっこり笑うと前歯が一本欠けていた。
「なぁ!!肉!!肉あるよな??なぁなぁ~??」
酒場の床で手足をバタつかせる少年はカウンターの二人に比べやや幼く、暴れまわっているのかあちこち傷だらけだ。
嬉しそうに食事を待つ屈託のない笑顔がとても愛らしい。
「ふふふ、ルフィはともかく、エースとサボの食い気なんて、きっと吹っ飛んじゃうと思うけどね。」
マキノと呼ばれた女性はカウンターの向こう側からにっこりと笑うと、少年たちにウインクをした。
程なくして、カラン・・・。と音を立てて酒場のドアが開いた。
「邪魔するぞ。」
「ガープさん、いらっしゃい。」
『げっ!!じいちゃん!!』
大股で入って来たのは、真っ白な海軍コートを羽織った中年男性。海軍本部中将“ガープ”だった。
「こるぁルフィ!!久々に会って早々、げ!とはなんじゃい!!」
ガープがルフィにごつん!とげんこつを食らわせると、小さなルフィの体はべちゃりと地に伏した。
「いてェ~~~~~~!!」
ルフィがじたばたと床でのたうち回っていると、エースとサボが駆け寄ってくる。
「んでェ?用事ってのはじいちゃんかよ?」
エースがつまらなそうに悪態をつくと、今度はエースの頭にげんこつが落ちた。
『いてェ~~~~~~~~~!!!!』
二人して床をのたうちまわるルフィとエースを見て大笑いしていたサボだったが、ガープの後ろに隠れている小さな影を見つけると、固まったように動かなくなった。
むくりと起き上がったエースも、サボ同様に固まってしまう。