第13章 気配
《アヤ・・・。》
静まり返る夜の静寂の中、アヤは目を覚ました。
懐かしい、優しい、声が聞こえる。
《アヤ・・・どこにいんだよ・・・。》
「エース?」
アヤはベッドから起き上がると、辺りを見回した。
耳を澄ますが、もう声は聞こえない。
(気のせい・・・だよね。)
再びベッドに潜るものの、気になって眠れなくなってしまい、喉でも潤そうとアヤは立ち上がった。
静かに客室のドアを開け、うるさくしないようにと抜き足で廊下を歩く。
「何してんだ、アヤ。」
「きゃあっ?!」
突然後ろから話しかけられてアヤは飛びのいた。
そこにはサボが目を擦りながら立っていた。
アヤははっとしたように構えると、じろりとサボを見つめる。
「あ、なんだよ・・・まだ怒ってんのか?」
サボが顔色を窺うようにアヤを覗き込むと、アヤはふるふると首を振った。
「ち、違うけど・・・サボ、なんでいるの・・・。」
「そりゃあ、お前の部屋のドアが開く音が聞こえたからな。」
悪びれもせず応えるサボに、アヤは少し後ずさりした。
僅かな気配に気づくサボも凄いが、そこまで過剰に反応されるとやや引いてしまう。
「サボ・・・ストーカー・・・?」
「はァ?!ひっでェ!!!
俺はなぁ、お前がどっか一人で行っちまってまた怪我でもしたら・・・」
サボの過保護なところは昔と変わらず、アヤはくすりと笑うと、矢継ぎ早に言い訳をする幼馴染を制止した。
「ごめんごめん。心配してくれてありがとう。
あのね、喉が渇いちゃって。何か飲み物をもらいに行こうと思ったの。」
「あ?そんなん俺の部屋の冷蔵庫に・・・」
「絶・対・行かない。」
「・・・・・・ですよね。」
がっくりと項垂れるサボに、アヤは笑顔でキッチンはどこかな?と尋ねた。