第13章 気配
深夜、静まり返ったキッチン
アヤはマグカップに注いだ水を飲み干し、ふぅっと息を吐いた。
横目でアヤの様子を見ていたサボが口を開いた。
「なぁ・・・アヤはさ、なんで島を出ようと思ったんだ?」
サボの質問に困ったように笑うと、アヤはマグカップをテーブルに置いた。
「エース・・・の訃報を新聞で読んだあとね、わたしずっと塞ぎ込んでたんだ。
そしたらアヴェルがね、気分転換に旅に出たらどう?って言ってくれたの。」
島を出ることなんて、考えたこともなかったけどね・・・!と悪戯げに笑うと、アヤは何かを慈しむようにゆっくりと瞳を閉じた。
「アヴェルがね、エースの魂がまだ現世に留まっていたら、会えるかもしれないよって。
ちょっと舞い上がっちゃったのもあって・・・。」
アヤの言葉に、サボは目を見開いた。
「そうか・・・!
ありえねー話じゃねェもんな。アヤの悪魔の実の能力なら。」
「でも、エースの魂がまだこっちにいたとしても、どこにいるかなんて見当もつかないや・・・。」
しょんぼりと肩を落とすアヤの頭を、サボはぽんぽんと撫でた。
「方向音痴のエースのことだから、今頃とんでもねーとこにいるかもな!」
《アヤ・・・。》
サボはにっかり笑ったが、アヤは突如、硬直して動かなくなってしまった。
「アヤ?」
サボが呼びかけても、反応が無い。
大きく瞳を見開いて、アヤは何かに集中していた。
アヤ?どうしたんだ?とサボが再び声をかけるとほぼ同時に、アヤはサボにぎゅうっと抱きついた。
突然のことに、今度はサボが硬直する。
「な、な、おい!?」
「サボ、お願い・・・!
まだ運動しちゃダメって言われたから、わたし走ったりできなくて・・・!
でも、何も言わずに外に連れていってほしいの。」
「い、い、今か?!」
顔を赤くして動揺するサボを見上げ、振り絞るようにアヤは懇願した。
「今すぐ!」
ただならぬ様子を感じとったサボは、何とか呼吸を整えると、意を決したようにアヤを抱き上げた。
「任せろ。」