第12章 感じる鼓動
《もっと、意識をはっきりと持つんだ。
そして、イメージするんだ。生きるという事を。》
どこからともなく声が聞こえる。
《僕は今、ここから動く事ができない。どうか・・・アヤを守って欲しい。》
「アヤに・・・何かあったってのか?」
見知らぬ声と、自身の状況にたいして湧き出る疑問は山ほどあったが、ひとまずは全て捨て置いた。
《まだ事は起こっていない。
でも、アヤに危機が迫っているのは確かなんだ。
だから・・・彼女を守って欲しい。》
「そんなの、決まってらァ!!おれはどうすりゃいい?!」
《君の魂がこちらに留まっていてよかった。
今の僕にできるのは、君を呼び起こすところまで。
あとは、君の呼びかけにアヤが気づくかどうかにかかっている。》
「呼びかけるって・・普通に呼びゃあいいのか?」
《君の存在を・・・強烈に思い出させる・・・な・・・・》
声はみるみる遠のき、やがて何も聞こえなくなってしまった。
気が付けば、辺りには陽が差し、見覚えのある景色が広がっていた。
樹脂のヴェールがふわふわと漂い、コーティングされた船が何隻も見える。
「ここは・・・シャボンディ諸島か・・・?」
賑やかな人通りの中に、ふわりと降り立つ。
周囲の人々に自分は見えていないようだ。
「はは・・・っ、嘘だろ・・・?おれ、幽霊になっちまった!!!」
あの得体の知れない声は何だったのか気になるが、どんなカラクリか、死んだ筈の自分はまたこの世界に、この地に足をつけている。
頭のテンガロンハットを取ると、つばの裏側を探ってみる。
「ラッキー!生きてた時のまんまじゃねェか!」
小さな紙きれを手のひらに乗せると、ずずず・・・とそれは動き出した。
それは大切な幼馴染を指す、ビブルカードだった。
「待ってろよ、アヤ!!」
にっかりといたずら気に笑みを浮かべると、エースは走り出した。