第11章 魅惑の人
正直な所、サボは記憶をなくしている間は修行と革命軍の仕事に明け暮れており、女になど全く興味が湧かなかったのだ。
「違ェ!!」
とにかく、誤解は解かなければいけない。
サボも負けずと声を張り上げた。
アヤは一瞬びくりとしたが、じろりとサボを睨んだ。
負けずとサボもアヤのアメジストの瞳を真っすぐ見つめる。
「強引にした事はほんっとに悪かった。でも、誰でもいい訳じゃねェ・・・。その・・・。」
強気な口調はどんどん弱々しくなり、サボはアヤから目を反らした。
「アヤだからに決まってるだろ。俺だってお前は可愛い妹だと思ってた。
けど・・・10年ぶりに会ったら、めちゃくちゃ綺麗になってるし、そんなん、女として意識しちまうだろ・・・。」
顔から火の出るような台詞がスラスラと出て来るサボに、アヤの怒りはみるみるうちに恥ずかしさに変換されてゆく。
「ドラゴンさんとこにいる間女になんか興味無かったし、俺だって驚いてるんだ。だから・・・」
「も、もういいよっ・・・!!」
はっとしてサボが顔を上げると、アヤがぷるぷると震えながら両手で顔を覆っていた。
「アヤ・・・、許してくれんのか?」
サボの顔がぱぁっと明るくなり、アヤに近づこうとすると、どごっと腹に鉛のように重たいパンチが飛んできた。
鍛えられているアヤのパンチは相当痛い。
「ぐァッ!!!!」
腹を抱えてサボはへたり込む。
震えるサボの前にアヤは仁王立ちすると、言い放った。
「今ので、許してあげる。でも、もう急にあんなことしないでね?」
「あァ・・・・ありがとな・・・・。」
青ざめたサボがアヤを見上げると、顔を真っ赤にして怒っているアヤの顔。
あーーー、クッソ可愛い・・・。
冷や汗を流しながら、懲りずにサボはそんな事を考えていた。