第11章 魅惑の人
「わ、サボ!!みてみてすごい!しゃぼん玉に人が乗ってる~~!!」
広大に根を広げるヤルキマン・マングローブの大きさにも驚いたアヤだったが、樹脂からできたしゃぼん玉を加工した雑貨や乗り物に、特に興味深々のようだった。
泡を纏ったわたあめを受け取ったアヤは目をキラキラさせながら街を眺め歩き出した。
「兄ちゃん、彼女すごい美人だねぇ!羨ましいなァ!!」
出店のオヤジがにやにやしながら声を掛けて来る。
歳の近い男女なので、側から見れば恋人同士に見えるのは当然と言えば当然だが、何だかこそばゆい感覚を覚える。
ほら、目を離しちゃいけないよ!
言われてアヤを見てみれば、随分遠い所まで歩いて行ってしまっている。
「あ、おい!ちょっと待て・・・!
サボは慌ててアヤに歩み寄ると、ぴたりと隣についた。
「んーっ、甘いぃ~!!ぽわぽわしてる・・・。」
わたあめを頬張って微笑むアヤを見てサボの頬は緩んだ。
アヤには女らしいふわふわとした可愛らしさがある。
再会した時、その磨きのかかった美しさにも驚いたが、容姿よりもアヤのしぐさや、言動の方がサボにとっては好ましかった。
ハタから見りゃ“すげェ美人”で片付くんだろうけど、この危なっかしくてぼんやりしたところが可愛いんだよなぁ。
うんうんと頷きながら一人ふけっていると、アヤが俺の手を掴んだ。
「迷子にならないよーに・・・っと。」
当たり前のようにアヤは手を繋いできた。途端、サボの体温がぐわっと上がる。
確かに昔はエースと俺とで三人手を繋いで歩く事が良くあった。その頃から既に気恥ずかしさはあったが、今となってはそれどころではない。
いやいやいや!!子供じゃねェから!!襲うぞテメェ!!
先ほどからアヤの無意識な挑発にやられっぱなしのサボは、片手で顔を覆う。
自分ばかりが意識をしているようで、少し腹が立って来た。
「あのさあ・・・・。」
繋いだ手をぐいっと引き寄せると、嬉々としてわたあめを口に運んでいたアヤが反動でサボの胸に飛び込んだ。