第10章 届かない声
「で・・・どうしたんだ?」
自室のソファにアヤを腰かけさせると、サボは少し離れた執筆机に腕を組んでもたれた。前のように隣に座ってしまうと、うっかり手を出しかねない。今はアヤの話を聞いてやらなければ。
「あの・・・ね。私が食べた実のこと、詳しく話したのはサボと、エースと、ルフィだけだと思うんだけど・・・。」
「あぁ、ヒトヒトの実の特殊なやつな?」
うん。と頷くと、アヤは続けた。
「その実を私にくれたのは、世界樹なの。」
「は?世界樹って、アダムとイヴのどっちかって事か?」
「えっと、正確には、三本目の世界樹。全然知られてないけど、私が昔いたお城の中にあったの。もう焼け落ちちゃってる筈だけど・・・。」
サボは目を見開いた。三本目の世界樹の話など聞いた事が無いが、アヤが嘘をつく筈も無い。いずれ、跡地を調査する必要がありそうだ。
「アヴェルっていってね、呼べばいつでも応えてくれたの。私に体術を教えてくれたのも、アヴェル。」
世界樹の精神体のようなものか・・・?
サボが思考を巡らせていると、アヤの顔色はどんどん悪くなってゆき、ぽろりと涙を零した。
サボは頭を撫でてやりたい気持ちを必死に堪え、アヤが話し出すのを待った。
「船で気を失って以来、アヴェルを呼んでも反応が無いの。いつもならすぐに返事が返ってくるのに・・・!」
「そいつがいないと、能力を使えねェのか?」
「ううん、そんな事ないよ。でも、ずっと一緒だったから、不安で・・・。」
そうか・・・。アヴェルって奴は、アヤをずっと守ってくれてたんだな・・・。
サボはもたれていた机から体を起こすと、ソファに座っているアヤの頭をぽんぽんと叩いた。
「泣いてもどうにもならねェだろ?ひとまず今は目の前の目的に集中してみたらどうだ?俺もアヴェルについて調べといてやるから。な?」
「うん・・・!」
アヤの表情が少し和らいだので、サボはよし!と声を発しアヤ立ち上がらせた。
「んじゃ、行くか!」
「ど、どこに?」
「おまえ、ここ着いてからまだ外出てないだろ?案内してやるよ!」
サボの言葉に、アヤの表情はぱぁっと明るくなった。