第10章 届かない声
アヤの傷の事もあり、大事をとってシャンクスとの合流は数日後となった。
「アヤおねえちゃん!この本読んで!」
客船から救出した子供達にすっかり懐かれたアヤは、連日のように囲まれていた。
動き回るような遊びをアヤに強要してはいけないという大人たちとの約束をしっかり守る子供達。
そこには関心したが、アヤと話す時間が激減してしまった。
この調子だと合流の日までにアヤを連れだせそうに無い。
(観光エリアでも案内してやろうと思ったんだけど・・・。)
「はあ・・・。」
「サーボー君?アヤさんと二人っきりになりたいんでしょ~?」
遠目にアヤを目で追いながら深い溜息をついたと同時に、どこから現れたのか突然確信をつく言葉を投げかけてきたコアラ。
サボは飛び上がった。まるで心の内を読まれているかのようだ。
「おまっ・・・仕事は!?」
「そっくりそのまま返していいかな?」
サボの自室の机には目を通していない書類が着々と積みあがっていたが、どうも手につかない様子。
席を立っては、子供達といるアヤの様子を伺うサボを見かねて、コアラは助け船を出しにやってきたのだ。
「サボ君、ひとつ貸しだからね♪」
コアラはそう言うとアヤと子供達の輪に入って行く。
“は~い!コアラお姉さんとこうた~い!”
“わー!!コアラおねえちゃん!!”
あっという間に子供達に囲まれたコアラ達の輪の中から、アヤが姿を現した。
サボを見つけると、にっこり微笑んで真っすぐこちらに向かって来る。
久々に自分だけに向けられた視線に思わず口元が緩んだ。
「サボ、おはよう!」
「おはよ。傷の具合はどうだ?」
ん~・・・と言いながらアヤは横腹をつんつんとつついた。
「もう抜糸もしたし、動いても痛くはないんだけど、ドクターさんたちはあと2日は運動しちゃダメって言ってたよ?」
「言う通りにしとけよ?」
「うん・・・。」
答えたアヤは少し不安そうに胸のペンダントを握りしめた。その様子を見逃す事なくサボは尋ねる。
「どうした?」
「うん・・・ちょっとね。」
話し辛そうな様子に、サボはアヤを手招いた。