第9章 牙を抜かれた四皇
何やら男同士盛り上がっている。
朝食をつつきながら横目でアヤが様子を伺っていると、サボがえ″ッ!!と野太い声を出した。
いやいや、そんな・・・などと少し引いた様子でサボは話していたが、電々虫を切ると苦笑いをした。
終わったの?とアヤが声をかけると、サボはちょっとびっくりした様子で頷いた。
「シャンクスさん、俺も一緒に船に乗れってさ。」」
アヤはぱぁっと明るい顔になると、うんうんと首を振った。
「そうだよ!サボも一緒に来たらいいんだよ~!別行動なんて、水くさいよ!」
そこいらの海賊ならともかく四皇の船となると、猛者だらけだ。
サボはひと揉みされるだろうかと一瞬懸念したが、
“野郎共には無礼な真似は絶対にさせねェ!”とシャンクスに押し切られてしまった。えらく気に入られたようだ。
まァ・・・離れるよりはいいか。
サボはそれ以上考えるのをやめて、置いていた食器を手に取った。
そんなアヤとサボをよそに、コアラとハックは物凄い形相で詰め寄った。
「よ、四皇の船に乗るの~?!」「四皇の船に乗るのか?!」
「大丈夫だろ。」
飄々と返事をするサボに、コアラとハックは心配そうに聞く。
「・・・サボ君勧誘とかされちゃったらどうしよう。」
「はァ?!」
身の心配かと思いきや、意外なコアラの発言にサボは吹き出した。
「だってだって~!サボ君強いし、シャンクスさんに強引に迫られちゃったりでもしたらどうしよう~!」
「強引に迫るって・・・。女でもあるまいし・・・!そもそも俺は革命軍を抜けるつもりは一切ねェ!」
ふんっと鼻を鳴らしたサボに、コアラとハックは胸を撫でおろした。
安心する二人を見て、アヤは微笑んだ。
一人で海に放り出され、10年もの間記憶を失っていたと聞き心配したが、信頼できる仲間ができたのな。とアヤは嬉しくなった。
それなのに、嬉しい筈なのに、ちくり、と少し胸が痛んだ気がした。