第1章 1
「ありがとう、手当」
「……あ、あぁ」
「じゃ」
「は?」
「世話になったわ」
ベッドから出ようとすると黒羽は目を点にした。
「何言って……」
「帰る、これ以上の借りは作れない」
「なっ、まだ安静にしてろ!」
私をベッドに戻そうとしている黒羽の手を振り払って立ち上がるとまた激痛が走った。
「ぃ………………」
「ほら、まだ安静にしてろ」
「必要ないわ、この借りはいつか返すから」
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次の日
登校すると驚いた顔をした黒羽が私をガン見している。
「おまっ、何学校に来てんだよ!」
「あらひどい、私学生なんですけど」
「絶対安静って行ったろ」
「もう大丈夫よ」
そう言って私は撃たれた場所を軽く2回叩いた。
「ほらね?」
黒羽は全く痛くなさそうにする私に少し安心したような顔をする。
本当はめちゃくちゃ痛い
朝の雑談を交わしていると、1人の男が教室に入ってきて私の横に立った。
「やぁ、ゆい、転校してきたのは本当だったんだね」
「えぇ、あなたはここ数日休んでいたみたいだけど?探」
白馬探昔から家同士の付き合いのある友人だ。
「ちょっと探偵の仕事で立て込んでいてね。ところでゆい、今夜暇かい?」
「?まぁ」
「毎年恒例の社交パーティがあるの知ってるだろ?」
「あ、そう言えばそうだったわね」
毎年強制で参加させられてたっけ……
「一緒に行かないかい?一人で行くつもりだったんだろ?」
「かまわないわ」
「7時に迎えに行くよ」
「えぇ」
探るがいなくなると黒羽が不機嫌そうに私をみた。
「なに?」
「白馬と知り合いだったんだな」
「家同士の付き合いで顔見知りなだけよ」
「名前で呼び合うほど仲がいいように見えたけど?」
「そんなんじゃないわ」
「ふーん」
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ピンポーン
「白馬様、少々お待ちください」
「あぁ、構わないよ」
探を待たせること20分、やっと準備が整った。
「お嬢様のお支度が整いました」
メイドの言葉に探の前に出ていくと探は目を見開いていた。
「……そんなに似合わない?」