第1章 1
一瞬の隙をついて全力でキッドを押し返すと私は駆け出した。
「うぉっ、ちょっ」
私は必死に駆けて通路を抜ける。もちろん今回私はキッドの狙う宝石を持っているのでキッドも追いかけてくる。
「待てよ!なんでお前今日……」
「うるさい!ついてこないで!」
「あいつ足はえーな……」
必死に逃げていると後ろでバキュンッと音がした。
え、キッドは拳銃使わないはずじゃ……
思考に囚われているあいだに私の右足に何かが絡まった。
「え?きゃっ」
ドサッと床に倒れるとキッドが私の前に立つ。足を見るとそこにはワイヤーが絡まっていた。
なるほど、ワイヤー銃…………
「んで、なんでお前今日俺の邪魔してんだよ」
キッドはしゃがみこんで私を見た。死んでも話すかという意味を込めて私はそっぽを向く。
「お前なぁ」
そう言いながら近づいてくるキッドを私は睨んだ。
「こないでっ!」
バキュンッ
私の叫び声と共に先程よりも大きい銃声がその場所に響き渡った。床を見ると私とキッドのあいだに銃弾がめり込んでいる。
銃声のした方を見ると男が二人いた。
「よう、お嬢ちゃんその獲物は俺らがもらうぜ」
「…………断るわ」
私がそう言うと男が銃を構えた。私とキッドは同時に柱の影に隠れる。
バキュンッ!バキュンッ!
…………屋上なら……
「どうする?」
私が算段を立てているとキッドが私に聞いてきた。
「屋上なら、あなたも充分戦えるんじゃない?」
「そうだな」
「決まりね、私が先に出る」
そう言い、私は駆け出した。
「ちょ、ゆい!」
銃声が飛び交う中走り続ける私に攻撃が集中すると、キッドがトランプ銃で男二人の手を打ち銃を床に落とした。
私は屋上へ通じる扉を開け、キッドを見る。
「快斗!」
私の声にキッドは扉に入った。2人で階段を駆け上がり屋上へ出る。
「あなたはここで行って」
「はぁ?」
「飛べるでしょ?」
「そりゃ、飛べるけど、お前は?」
「二人ともいなくなったら飛んでるあなたに銃口が向くわ、私はここで応戦する。」
「バカ言うな!」
そういうキッドに私はビッグサファイアを投げた。