第3章 【き】きっと終わってしまう恋だから
怒る勝己を漸く写真に収め、不機嫌そうに画面に映った勝己を見て思わず笑みを浮かべると、きめぇと言われたが、言い返す程私も子供じゃない。昔は生意気な勝己の言葉一つに傷付いたり怒ったりしてたのが懐かしくもあり、寂しくもある。
昔は可愛い弟のような存在だったけど、可愛いのは最初だけだった。特に個性に目覚めてからの勝己はヤンチャなんて言葉じゃ片付けられないくらい手に負えなかった。四つも年下の勝己相手に何度泣かされた事か。口が悪くて乱暴な勝己の事が一時期は凄く嫌いだった。けど、そんな勝己はある日を境に私のヒーローになった。同級生の男の子達に無個性である事を馬鹿にされた上、親の事を悪く言われ、思わず手が出た。そこから掴み合いの喧嘩に発展。二人がかり、それも男の子相手に勝てるワケも無く、悔しい思いをした。喧嘩の後ボロボロになった姿を勝己に見られ、恥ずかしさと悔しさで涙が止まらなかった。そんな私に対し、俺以外の奴に泣かされてんじゃねえ!と鼻息を荒くした勝己は上級生二人相手に喧嘩を挑み、その男の子達を打ち負かした。喧嘩に勝ちはしたけど、勝己はボロボロで、浮かべた涙を誤魔化すように拭っていた。不覚にもその姿はカッコよく見えたし、初めて勝己を男の子として意識した瞬間だった。一度勝己を男の子と意識してからはその気持ちはより一層強くなり、完全な恋心へと変わった。けど、勝己は赤ちゃんの頃からよく知った四つも年下の男の子。この恋が実るワケは無いと恋心を自覚した日に、勝己への想いに蓋をした。なのに、年を重ねる毎に男らしく成長する勝己に気持ちは募る一方だった。現に高校生になった勝己を見て、やっぱりカッコいいな、と思ってしまった。