第3章 【き】きっと終わってしまう恋だから
「うわ、本当に雄英の制服着てる!」
小さい頃からよく知っている年下の幼馴染の勝己。相変わらず反抗期真っ只中らしい勝己は元々不機嫌そうだった顔を更に険しくし、私を睨み付けた。
「なんでテメェがいんだよ!?」
久しぶりの再会だっていうのに、再会を祝う言葉や社交辞令なんて一切無し。勝己らしいと言えば勝己らしいけど。
「今年度からこっち勤務になったの。」
「まだくだらねえ仕事やってんか。」
「くだらなくない!」
人口の八割がなんらかの個性を持つ時代。小さい頃はヒーローに憧れたし、大人になったら絶対にヒーローになると意気込んでいたけど、残念ながら個性に目覚めなかった私は勝己の言う、くだらなくない仕事、世間では敵(ヴィラン)受け取り係と呼ばれる警察官を務めている。警察官は個性を使用してはいけないという制限がある為、私と同じ無個性や、弱個性の人達が集まっている集団だ。敵(ヴィラン)による犯罪が絶えない今、ヒーロー無しで犯罪者の取り締まりが出来ないのが現状。世間の風当たりは強いけど、それでも私はやり甲斐のある仕事だと思ってるし、自分の仕事に誇りを持っている。
「ねえ、勝己。写真撮らせて。」
「は!?ざけんな!誰が撮らせるか!」
大人になった今でもヒーローに対する憧れが無くなったワケじゃ無い。毎年名だたる有名ヒーローを輩出する雄英高校。そんな有名校に小さい頃からよく知った勝己が入学したんだから嬉しいし、記念に写真を撮りたいと思うのはごく自然な事だと思う。
「まさか勝己、アンタ写真撮られたら魂抜かれるとかまだ思ってたりする?怖いの?」
「んなワケあるか!写真くらい撮らせてやるわ!」
出来ないだとか、そういう事を言われるのを最も嫌う勝己は扱いにくいようで、実は凄く扱いやすい。