第7章 (5)Everyday
私はこの学校の生徒ではない。
この研究室のメンバーに最初に出会ったのは半年ほど前のことだった。
私の通っていた埼玉の大学と、淑央大学の合同イベントが行われたのだ。
そこで私達は意気投合。連絡先を交換して、たまに会話したりお互いの大学行事にお邪魔する仲となったのだが…。
その関係が大きく変わったのはつい最近のこと。
知ってる通り、私はマトリの皆さんに薬効体質の可能性を見出され急遽従姉妹の家に避難することになった。
しかしそうなると今まで通っていた大学に通いづらくなり、卒業も困難になるという問題が浮上したのだ。
そこで取られた緊急処置が『瀬尾研究室で手伝いをしながら心理学を勉強することを単位の代わりにする』だった。
本来はそんな異例の方法、許可されるはずがないのだが…厚生労働省の根回しと、2つの大学自体の仲がとても良かったことが幸いし、この形が取られることとなったのだ。
まぁ簡単にいうと、大学卒業の為に今は淑央大学と瀬尾研究室にお世話になっているのです。
こんな偶然あるのかと、4人ではしゃいだあの日が懐かしい。
「ん〜…透さんの膝…気持ちいい…。ねぇ、働くのっていつから?卒業する前から通うの…?」
ここに来るまでの出来事を思い出してた私を引き戻すように、志音くんが声をかけてきた。
「うん、最初はアルバイトとして通う予定。この研究室に来る頻度も少しだね落ちるかな」
「……寂しくなるね」
志音くんはそう言って、私に視線を合わせる。
ソーダのような淡いブルーの瞳が柔らかく揺れた。
「でも大丈夫だよ!頻度が減るだけでこの研究室にも絶対顔出すし!」
「本当…?良かったぁ」
私の言葉に志音くんは安心したのか、へにゃりと柔らかく笑った。
「仕事で困ったことがあったら、いつでも俺らに言ってね」
「志音くんの言う通り!潔くんも僕も透ちゃんの味方だからね!」
「お、お、俺なんかが味方なんて嫌かも知れませんが…」
「嫌なわけないよ、嬉しい!3人ともありがとうね!」
友人たちの優しさに胸が熱くなる。
と同時に働き先があんな大豪邸で、あんな無茶苦茶な経緯で働くことになったなんで絶対言えないなと思った。
「(こんなこと言ったら全員卒倒して馬鹿馬鹿言われそう…あれ、一応この中では最年長の筈なのにこんな心配される私って………。)」
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