第7章 (5)Everyday
先程の会話から数時間程たっただろうか。
それぞれやるべきことを終えた私達は共に帰路についていた。
ひかるくんが見つけた美味しいクリームソーダ専門店のことだとか、志音くんが高校生クイ大会に出演することになった話を聞きながら歩く。
「(平和な日常ってこういうこと言うんだなー。九条家にいる時は非日常全開で、慌ただしかったからなぁ)」
そんなこと考えながらぼーっと前を見ると、ガタイの良い金髪の男性が目に入った。
あの人、なんだか桐嶋さんに似てる…。
そういえば桐嶋さんとの出会いが1番インパクト大きかった。
しかもあんなことがなければ絶対普段関わらない人種だしなぁ。
大きな身体に引き締まった筋肉。ライオンみたいにかきあげられた金髪から覗いた額には傷もあった。
あんなのもし潔くんなんかが見たら泣いちゃうかも。
そうそう、目の前の男性もかきあげられた金髪で傷があって本当桐嶋さんそっくり……。
そっく…り…?
あれ、ちょっと待ってあれまさか。
「もしもし?カナメか、さっき話してた件なんだけどよ…」
ぎゃーーーッ!?!?!?
桐嶋さんだーーッ!!!!
これはまずい。何がって瀬尾研メンバーに桐嶋さんを会わせることがだ。
皆は私の仕事先のことを異常に心配してる。もしあんなライオンみたいな人がいるって分かったら…。
「透ちゃん!?あんな人がボディーガードしてる所だなんて聞いてないよ!?」
「泉さん……危ないです…」
「危険、ダメ、絶対。そんなとこ行かせない。」
最悪こうなる。
それだけは絶対ダメ!
「あー!!!!!」
「えっ、どうしたの透ちゃん、そんな大声出して」
「私この後予定があるんだったー!!!!ごめんだけど先帰るね!!じゃ!!」
「ええっ!?ちょ、透ちゃん!?」
ひかるくんの静止も聞かずに、私は勢い良く走り出す。
とにかく今はひかるくんたちの前で桐嶋さんに接触するわけにはいかないのだ。
ごめんよ、皆…またパフェ奢るから許して…!
頭の中で必死に謝罪の言葉を言いながら、私はとにかく走り続けたのだった。
.