第7章 (5)Everyday
時を同じくして、ここは瀬尾研究室。
そこには一見無関係の人間に見える少女が
「へっくしゅん!!」
思い切りくしゃみをぶちかましていた。
「うわぁ、びっくりした。透ちゃん大丈夫?」
「あ…ごめん、ひかるくん…」
皆さんこんにちは。
泉透です。
今日はお世話になってる大学研究室に来ております。
就活中だったとは言っても大学生の身、昨日驚愕の展開でまさかの就職先が決まった私は、ルンルン気分で卒業に向けて勉学に勤しんでいた。
…というのは半分建前で、ここにいる友人達に就職先が決まったことを報告しにお喋りに来ました。
「もー、働ける場所が決まったのは良かったといえ、気が抜けて風邪ひいたりしたら本末転倒だよ?」
「あはは、ごめんごめん。誰かが私のこと噂してるのかなー」
ふざける私に対し、目の前にいる美少年、可愛ひかるくんはぷうっと頬を膨らませた。
「またそういうこといって誤魔化してー!潔くんからも言ってやってよ」
「えぇ!?お、俺ですか…!?」
「そうだよー、透ちゃんふざけてばっかいないでちゃんと体調管理してって言ってやって!」
「そんな、俺なんかが…」
ひかるくんに急に話を振られて、パニックに陥っている青年は宝生潔くん。
レポートを纏めていた彼の手は緊張で小刻みに震えまくっている。
「そういうのは、お、俺じゃなく、日向さんに頼んだ方が…」
潔くんがそう呟いた瞬間
「志音」
「うわぁ!?」
先程まで何故か私の膝ですやすやと眠っていた少年、日向志音くんが突然声をあげた。
どうやら潔くんの自分への苗字呼びが気に入らなかったようだ。
「日向じゃなくて、志音」
「すみませんすみません、苗字で呼んですみません」
「志音」
「し、おん」
「…よし」
名前を呼ばれて満足したのか志音くんは嬉しそうにまた眠りについた。
…何故かまた私の膝の上で。
「いや志音くん、よしじゃないでしょう。なんで私の膝で寝るかな?あっちにクッションあるよ」
「んぅ〜…やだ。ここが良い。」
「あはは、志音くんは出会った時から透ちゃん枕がお気に入りだから」
猫のように私の膝で寛ぐ志音くんを見て、ひかるくんが楽しそうに笑う。
その言葉を聞いてふと、この研究室の皆と出会った日のことを思い出した。
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