第6章 (4)Housemaid
「治療費は俺が払う。新堂もそれなら問題ないだろ」
「えっ…」
聞き間違いだろうか。
今凄い言葉が聞こえた気がする。
「もちろんそれで良いが…九条がその女にそこまでしてやる義理はないだろう」
「そうですよ。これは私の問題ですし、あなたの手を煩わせるわけには…」
九条さんの突然の提案。
驚いたのは新堂さんも同じようで、不思議そうな表情を覗かせていた。
「確かに義理はないが…お嬢さん、君は聞くところによると以前豪の手助けをしてくれたようだね」
「手助けなんて…私がお節介を押し付けただけです…」
あまりにも恐れ多く、九条さんの言葉をすぐさま否定をする。
しかし九条さんの隣でお茶を入れていた宮瀬さんが「そんなことありません」と私に笑いかけてくれた。
「泉さんがいなければ、僕は大切な庭をなくしていたかもしれないんです。貴方は僕を助けてくれたんですよ」
「そういうことだ。しかも先程私と桐嶋は不可抗力とはいえ年頃のお嬢さんの着替えの邪魔をしてしまったんだ。この罪は償わなければいけない」
「罪だなんてそんな…!」
なんだかスケールの大きな話になってきたぞ…。
というか私の裸にあの治療費程の価値はないです!!
「お気持ちはありがたいです…でも、そんな大金をそれだけの理由で肩代わりしてもらうわけにはいきません」
「だけどお姉さん、豪さんの話では就活生なんでしょ?あの金額を払える経済力があるとはとても思えないんだけど」
「ぐっ…」
話を聞いていたカナメくんに痛いところを突かれる。
全くもってその通りだった。
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