第3章 ♡雨の日のおくりもの
「.........それじゃあ...と、とにかく...このままだと風邪を引いてしまうと思うので...」
悩んだ結果、とりあえず
彼を1人、ビジネスホテルにでも押し込もう、と
考えついた時だった。
ーブー...ブー...ブー...ブー...
「あ...ちょっと、すみません...」
携帯のバイブ音に気付き、
画面に表示された名前を見ると
一瞬にして、背筋が凍りつくのを感じる。
「...あ............」
『...?......どうしたんですか?』
「い、いい、いえ......」
『?...なんだか、様子がおかし...』
朝日(と名乗る男)がちらりと携帯に目をやると
【 不在着信 28件 】
と表示された画面が目に入った。
『あの...それ........?』
携帯を指差し、陽葵に尋ねる。
「あ...こ、れは......その...」
返答に困ったように、
陽葵の目があからさまに泳ぐ。
『それ、大丈夫なやつですか?
...さっきも、電話、でてなかったけど...』
「あ、と...その...ちょっと、変な人に付きまとわれてて......でも、私は大丈夫です。」
陽葵はにこり、と無理して笑顔をつくる。
『............』
「......それじゃあ...」
陽葵がゆっくりと腰を上げるのを
彼が力をこめ、それを押さえる。
「...っ......」
『...ちょっと、これは引けないな。』
「............え?」
振り返ると、
再びとても真剣な瞳と目が合った。
『ごめんね。僕でもこんな急に求婚してくる怪しい人、実際相手になんてしないし......。
最初はせめて何日間かは時間を掛けてもいいかなと思っていたんだけど......』
「.....」
『ごめん、やっぱり、そうも言ってられないや。』