第2章 すれ違い
「なぁ。謝ってんだろー。いい加減機嫌直せよ。」
さっきから私は、隆二とまともに会話をしていなかった。
彼が私のそばへ来ると、私はキッチンへ逃げる。
私の行動に隆二も限界がきたみたい。
「もう、俺ねる。」
ブスっとした顔で寝室へ行ってしまった。
今日も午後からの仕事だから、2人で久しぶりに海を見に行こうって言ってたのに。
よりによって、元カノと一緒にいて朝帰り。送っただけだってわかっていても、2人きりになった時間が少しでもあると考えたら落ち込む。
ソファーに腰かけて窓の外を眺めてるのに、脳裏には妄想が浮かぶ。
『ばか…。』
泣きながらいつの間にか、ソファーで寝てしまっていた。
誰かの気配で目が覚めた。
隆二が私を後ろから抱きしめて寝ていた。
「…。」向きなおして隆二の顔を見つめる。
私の目の前にいる愛おしい人。
涙があふれた。と、隆二が動いたから思わず、向き直す。
私を抱きしめる腕が強くなる。
『隆が大好き。』心底思った。隆二の手をぎゅっと握る。
「んー。起きた?ごめんな。名無し。」
眠そうな声。寝ぼけてるみたい。
「♪~♪~」
電話が鳴った。隆二のみたい。
「隆二。鳴ってるよ。電話。」
「んー。出て。眠い。」
「もう。…。」テーブルの上にある隆二のスマフォを取って電話に出た。
「あ!隆?!よかったーー。さっき起きたら自宅だったから。隆が送ってくれたって聞いて。ごめんね。ありがとう。…。あれ、隆、聞いてる?」
「…。隆二。電話。」抑えきれない気持ちが溢れそうになって、無理やり隆二にスマフォを渡す。
「へ?なんだよ。はい、もしもし。…。え、ゆい?どうした…?」
彼女と気づくと無意識のうちに優しい声になった。
耐え切れなくて、彼の腕を振りほどいて逃げるように寝室に行く。
「おい!名無し! わりい。掛け直すわ。」
私は、ベットでうつぶせになって泣いていた。涙が止まらない。鍵をかけた寝室のドアをたたく音がする。
「名無し。ここ開けて。説明すっから。お前が納得してくれるまで。」