第4章 笑顔の奥の想い
TETSUYA side
「はー。俺、今日はどうしたんだろ。」
いつもは、抑えてた名無しへの気持ちが我慢できなくなってる。
隆二の所へ返したくない。
そんなことを悶々と考えてた。
合同の飲み会で、名無しを連れていったのがあいつらの出会いだった。
はじめは、俺にくっついて不安そうにしていた 名無し。どこにでも溶け込める明るくて人懐こい性格のあいつは、すぐに仲間とも打ち解けた。
そんな名無しに一目惚れした隆二は、 名無しがトイレに行ったすきに俺のところへ来ると色々と聞いてきた。
「てつやさん。名無しちゃんと付き合ってるんですか?」
「へ?いやいや。そんなんじゃねーよ。…、あれ?お前もしかしてタイプなの?」
「はい。(笑)」照れ笑いをする隆二。
トイレから帰ってきた 名無しを隆二と俺の間に座らせる。
二人ともすぐに意気投合して、番号を交換してた。
「隆二。俺の妹を、泣かすんじゃねーぞ。」
「はい。俺、こう見えてものすごい一途なんで!!」
飲み会の帰り道。
タクシーの中で沈黙が流れる。
いつになく元気がない名無し。
ずっと、窓のそとをみてる。
「どした?飲みすぎたか?」
「ううん。ねえ、てっちゃんにとって、私って妹なの?」悲しそうな顔で聞いてきた。
「うーーん。そうだなぁ。ほっとけない存在なのは確かだな。いつも横に置いておかなくちゃ落ち着かない。」
「えーなにそれ(笑)私、マスコットみたいじゃない。」
「それだ!マスコット。かわいいマスコットだよ。」
「あんまり嬉しくないなー。」そう言うとまた外を見始めた。
本当は、名無しのことを好きだった。でも、結婚願望が強いこいつを幸せにできる自信がなかった俺は、ずっと気持ちを抑えてきた。
付き合っても、忙しくてほとんど一緒には居られないだろう。
それだけじゃない。寂しいおもいをさせて、振られてしまったら、この関係が崩れる。俺だけのものにならなくても、こうして時々でもそばに居れるならいいって思った。
でも、今後、俺は後悔をすることになる。
隆二と付き合い始めたからだ。