第11章 常闇の彼方に(黒尾鉄郎)
「お待たせしてすみません!」
前髪を直しながら、私服の先輩に声をかけた。
大学に行ってから先輩はますますカッコいい。
私服がまたお洒落で、少しチャラっとしているくらいで丁度いい。
「待ってねーよ」
その甘い声で話しかけられるだけで、ぞくっとしてしまう。
(幸せ…!)
でも、私はまだ付き合えていない。
先輩の奴隷みたいなものでしかない。
それはきっと、私の想像する何倍の数もいるんだろう。
私はなんとか、その中のお気に入りになりたい。
付き合わなくてもいい。
せめて、その人数からのしあがりたいと誓った。
だから、どんな命令も聞くし、いつでも飛んで会いに行ってる。
いつかは、独り占めしたいけれど……それは、高望みだと思って、心の底にしまいこんだ。
「飲み物くらい奢ってやるよ」
「そ、そんな!大丈夫ですっ!!」
「後輩が遠慮すんな」
先輩は何が好きか聞いて、コンビニで適当に何種類か選んで買ってくれた。
こ、こんな、私なんかに…!
慈悲深いご主人様をちらりと眺める。