第11章 常闇の彼方に(黒尾鉄郎)
黒尾先輩に告白して、それ以来、呼ばれれば、そういうことをして…。
でも、あの身体を、声を、どうしても独り占めしたくて、私はどんなに忙しくても、学校の授業中でも、犬みたいに駆けつけた。
先輩が大好きというのもあったけど、まるで、本能が求めているようだった。
「…、今日うちに来れるか?」
「いく、行きますっ!」
「いい返事だ。駅で待っててやる」
私は、言いなりだ。
先輩は喉でくくっと笑うと電話を切った。
「ごめん、先輩に呼ばれたからまたね」
先約の友達を断って、私は帰りとは反対のホームに降りる。
地下鉄の生ぬるい空気が気持ち悪い。
先輩からの電話を切って結構経つのに、まだ指先が熱い。
少し待ち合わせより早めに着いて、メイクをし直して、少しでも綺麗に見えるようにする。