第11章 常闇の彼方に(黒尾鉄郎)
黒尾先輩の家には、何度か遊びに来たことがあった。
いつ来ても緊張する。
そのシャープな香りと、たまに焚いてるお香がまたお洒落だった。
買った飲み物をテーブルに置いてもらい、適当に座って、と言われてそうした。
相変わらず、心臓がばくばくする。
昨日は声掛けてもらえなかった。
一体どんな女性が相手したのだろうか。
そわそわとそんなことを考えてしまう。
部屋のドアが閉まると、先輩がにっこりと微笑んだ。
「…」
名前を呼ばれるだけで腿を擦り合わせてしまう。
それだけで、私は、蕩けそう。
顎を引かれて目を見るよう促される。
それだけで、全身が熱くなってくる。
制服を少しずつ脱がされ、やわやわと身体を触られる。
それだけで、達してしまいそうになる。
私はいつからこんなにイヤらしくなってしまったんだろう。
目をぎゅっと閉じて、与えられる刺激に耐えようとする。
歯を食い縛ってるせいで、絶対変な顔してる…。
「どうした?」
「きゃぁっ!?」
「嫌か…?」
「や、やめないで!!」
ハッとして、思わず先輩の腕を掴んでしまう。
「は、まだ緊張してんのか…可愛いなぁ」
(かわいいって言われたっ!!!)
心臓が跳ね上がる。
先輩の言葉は人がうっかり殺せそうだと思った。