第7章 常闇(黒尾鉄郎)
濃厚なバニラのような、そんな感覚が頭をよぎる。
ゆったりとした動作で、指が3本にまで増えて、じゅくじゅくと中を掻き回される。
動きが早くなってくると間隔もなく、ずっと重たい快楽が脊髄に居座り、私は息も出来ないまま悲鳴に似た声をあげて痙攣するしかなかった。
「ぁああああ…!!
あっ、は……っ!!!んっ!!!」
引っ掛かれるように指を抜かれると、意図せず勝手に弧を描いて真ん中から水が吹き出る。
恥ずかしさもあるはずなのに、蕩けきった頭では何も出来ず、ひたすらに流れる快楽をひくひくと爪先を揺らすことで逃がすしかない。
「イヤらしい…あれ、聞こえてない?」
黒尾先輩が、広角をあげてにやりと笑う。
一方的な行為に、気持ちよさと反するように、恐怖がある。
(先輩が、好きなのに……怖…い)
「挿入れようねぇ…」
幼子をあやすかのように背中に手を回され、よしよしと撫でられると、固い感触が三回、上下を往復した。
獲物を吟味するかのように。
ずぶっと音でもするかのように、真ん中が裂ける。
「あっ!!!!」
「痛いか?」
甘いテノールがさっきまでの無機質とは考えられないくらい、耳元で、甘く甘く聞いてくる。
それだけで、脳内の何かが音がするようにショートした。
その声が、気持ちいい。
「やぁ……、いた、いたいですぅ…」
「力、抜いて」
「んんっ、ん…」
どうしよう、掠れた声だけで、反応してしまう。
腰がもぞもぞして仕方がない。
早く、奥を、愛して欲しい。