第1章 王子と気まぐれ姫(菅原孝支)
「手を繋いで」
「あ、うん…」
「不思議ね。
こうすると、心に空いてた穴が満たされる気がするの」
向かい合わせに横になっている彼女がにこっと微笑む。
「ねえ、これ以上満たされたら、どうなると思う?」
「…わからない」
実際、俺もこうして嬉しそうにするさんを見ているだけで凄く幸せだった。
だから、この後どうなるかなんて、全く想像できなくて。
好奇心と邪な考えが交互に脳裏に過る。
「菅原くん、私、何日も待っているの。
こんなに耐えた人いないから、凄く戸惑ってる。
私は…そんなに魅力ない?」
「な、んのこと?」
気まずくて、気恥ずかしくて、とぼけたように返した。
「私のこと……抱いてくれないの?」
この気まぐれ屋は、いつもこうしてなんの前触れもなく、俺に爆弾を落としてくる。
少し泣きそうなその顔は、見たことがなかった。
目眩がするような色気と、無垢な少女の顔を併せ持っていた。
「そりゃあ…耐えるよ、嫌われたらって思うと」
「嫌わないよ、来て」
「わっ…」
腕を引かれて、上にのし掛かる形になってしまう。
心臓がうるさい。
「…菅原くん、ハジメテ?」
「…はい」
「そっかぁ、嬉しい。
ね、キスして?」
それはあまりにも辿々しくて、ゆっくりとした口付けだった。
ちゅっとリップ音を立ててそこに吸い付けば、恥ずかしさのあまり離してしまう。
「違うでしょ」
彼女は表情を一切変えないで、俺の顔を抑える。