第4章 白昼夢幻想曲2(烏養繋心)
「ちゃんと無心にやってんじゃねえか」
「……はい…、あ、今日は、たまたま…」
「なんでもいい、やれれば。
好きってことだろ?」
鍵を閉め、彼が後ろを向いたところで息を吐いた。
熱い。
(言っても、こんなに好きなんだ…)
言葉だけでは追い付かない。
本や映画で教えてもらったものより、あまりにも深すぎる感情は、私の頭だけでは処理がしきれない。
コップから溢れる水のようにも思えた。
「送ってやるよ」
お決まりの台詞を言ってくる。
「……か、帰りたくないです…!」
彼はその返事を待っていたように口角を上げる。
「給料日前なんだ。
朝まで誰もいねーし、うちでいいか?」
「……はい」
ゆっくり、頷いた。
相変わらずの優しい手付きに自惚れそうになる。
夢の中みたいに私も名前が言えたらいいのに。
一度呼んでしまうと、きっと後戻り出来なくなる。
「あっ、あぅ……っ」
なんとなく、彼が生活している部屋というだけで、声が出しにくい。
恥ずかしい。
いつも何しているんだろう。
そんな生活空間に足を踏み入れて、こんな淫らなことをして、それが残っていくというのが、耐え難い。
でも、後ろから揺さぶられるのは、相変わらず抑えようのない快楽で、はあはあと涎を流しながら受け入れてしまう。
「あ、あぁ…っ、い…っ!」
枕に顔を埋めると、前後で抱き締められているようで、このまま消えてしまえるならなんと幸せなんだろうと思った。
そのせいで、簡単に果ててしまう。
爪先を丸めて、身体が動かないように歯を食い縛る。
「我慢、すんなよ」
弱いところを抉りながら言われると、そうしたくなる。
まだ羞恥心のがどうしても大きくて、シーツをきゅっと握る。
「やぁあっ、み、みないで、おねがいっ…!」
お腹の奥がきゅっと痺れて、目の前がチカチカと眩しい。
息を整えていると、後ろから優しく抱き締めてくれる。