• テキストサイズ

【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第28章 姫君の憂鬱4(菅原孝支)


数時間後には、目的の駅に着き、さんは颯爽とネイルサロンというところに入っていく。
カフェで数時間待たされ、好きな物を頼んでいいと言われたのてブレンドコーヒーを2杯ほど飲んだ。
一応持ってきていた単語帳を眺めている間に、彼女は嬉しそうに戻ってきた。
みてみて、と軽やかな声で、ピンク色をした爪をみせてくれた。
次は服を見るから、と大きなファッションタワービルに連れて行かれる。
大音量の音楽と、ピンクを紫のネオンの光にすっかり圧倒されてしまった。
さんは値段も見ずに服を買い、ついでに俺の服も見つくろってくれた。
いつも着ないような物ばかりで、凄く緊張する…。
「菅原くん、なんでも似合うね?」
いつもより赤い顔で言われ、何も返せなかった。
さんがそんな表情で自分を見ることなんて、ほとんどなかったから。

その後は、小さな遊園地に連行され、そして海の見えるテレビ局まで連行され、その近くの公園の観覧車に乗せられた。
交通費もほとんど出してもらった。
俺の持ってきたお小遣いで買えたのは、本当に些細な物で…。
でも、ゆっくりと沈んでいく夕陽を眺めながら乗る大観覧車は、凄く、神秘的だった。
さんは、寂しそうに、その赤と紫のグラデーションがおりなす空を眺めた。
今にも消えそうな女神にも見え、それでも、彼女は、たった一人の普通の女の子。
「菅原くん、帰らなきゃ、だね…」
「…うん」
「ごめんね…、無理やり…部活もあったよね…」
「いいよ、一日くらい」
そう、だって、昨日は…
「一日遅れたけど、誕生日、おめでとう」
それは、本当に些細な贈り物。
日付が入った、熊のマスコット。
その手には、大切そうに誕生石を持っている。
「ごめん…もうちょっといい物…あればよかったね」
ちょっと笑ってしまったけれど、その熊は、さんにとても似合う色で、一目で惹かれた物だった。
「…ううん、凄く、嬉しい…。
ありがとう…」
/ 238ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp