第20章 蜂蜜レモネード4(影山vs及川)
「どうしてここに?」
「前々から、逃げることは考えていた…。
徹さんとの、関係はダメだって、思ってたから。
でも、どこに逃げてもいつも捕まっちゃうから…、今回は、友達の家にも泊まらずに逃げたの。
それで、影山くんのことふと思い出して……」
「…そっすか…」
そんな状況で思い出されるとか、ちょっと自惚れる…。
さんは安心したのか、そのままその姿勢で眠ってしまった。
毎日少しずつしか眠れずにかなり疲れていただろう。
そのまま寝かすことにした。
夕飯は部屋で食べると言い、多目に持っていく。
起きたら食べるかと思ったが、さんが目覚めたのは深夜過ぎてからだった。
「影山くん」
寝ている人の頬を彼女は平気でぺちぺちと叩く。
「かげやまくん」
「……ん」
「ご飯と、ベッド、ありがと、ごめんね?」
「や…」
「影山くん、前言ってくれた好きって、ほんと?
私とシている間の、ムードに流されたものじゃなくて?」
誰がそんなことを教えたんだ…と思ったが、1人くらいしか浮かばない。
「…本気です」
「そっか…。私ね、まだ、わからないんだ。
徹さんには、そうだって言われたけど、それがどういう感じなのか、わからないの。
きっと、全部終わったら、わかるかもね?」
「……」
さんの瞳は、ずっと変わらない。
前のまま、宝石のようだと思った。
「何年でも、待ちます」
「…ありがとう」
柔らかい唇が、そっと自分のそれに重ねられる。
情けないことに、それだけで顔すら見られない。
「……」
きっともう、後戻りはできないと、そんな風に思えた。