第15章 白昼夢幻想曲4(烏養繋心)
「考えてみたら、絶対音感あるお前に聞かれる方が恥ずかしいな?」
パネルを弄りつつもそう言う。
既に何曲か入れられ、私は横で飲み物をすすっていた。
「私の音感は大したことないですよ…。
主旋律と一部の伴奏しか聞き取れませんから…」
「充分だっつーの!」
曲が流れ始める。
何気に最新のヒットソングだった。
もっと、古いの歌うと思ってた。
煙草で掠れた声が、凄く色気があって、ますます好きになる。
歌詞がまた切なくていい。
録音して持って帰りたいくらいだ。
毎日でも聴いてしまうだろう。
心地よく聴いていたのに、すぐに自分の番が回ってくる。
拙い歌を聴かせるようで、恥ずかしくていつもより歌えなかった。
「やっぱ基礎が出来てると違うな…」
と褒めて貰えたけど、今すぐにでもトイレに隠れたくなった…。
「わぁ!!もう止めますーっ!」
「なんで!」
「無理!人に褒められるのとか、苦手……」
散々貶され怒鳴られてきたせいか、今更横で言われても恥ずかしいだけだ。
「褒めるのうちにすら入らねえよ」
「聞いていたいです、ダメですか?」
「……」
また恥ずかしそうにすると、タッチパネルを操作して何曲か入れてくれた。
じっと、聞き入ってしまう。
こういうデートもたまにはいいなあ、なんて、思いながら。
私の知らない曲もいくつか入っていて、しっとりとした時間を過ごした。