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【短編集】慟哭のファンタジア【HQ】【裏】

第15章 白昼夢幻想曲4(烏養繋心)


「でも、血とか苦手なので……そのまま貧血で倒れて……、その……起きたら、先生に怒鳴られて、停学処分を言い付けられて……」
彼は大きなため息をしながら煙を吐いた。
「えっと、ごめんなさい…」
「いや、いいんだけどよ……俺のことくらいで…」
「くらい、じゃないですよ。
好きな人のことを悪く言われるのは、凄くムカつくことなんです」
「……」
ほんの一瞬、照れたような仕草をされるが、それが可愛く思えた。
「……家で何してんだ?」
話題を変えようと、無理くりちぐはぐな会話を続けさせる。
温かいアールグレイに一口ふくんでから、ここ数日の自分を振り返った。
「お母さんの小言を散々聞いてから、練習してご飯食べて勉強して……、一回だけこっそり抜け出して、カラオケと皮膚科に行きました」
「カラオケとか行くのか?」
「…あんまり歌、上手くないですけど…、やっぱり、音楽は好きだなあって」
「へえー。
つか、皮膚科?それは親と行ってもよかったんじゃねえの?」
「ピアス…」
ああ、と思い出したかのように言われる。
「メンズだぞ、それ」
「うん、それでも、いいんです」
むずがゆそうにしかめっ面をすると、私の耳元を見てくる。
「似合ってる」
「ありがとうございます」
吸い終わった紙くずを灰皿に押し付け、行くか、とカウンターの高い椅子を降りた。
私が降りるときは手を掴んでくれて手伝ってくれる。
無理して履いてきたヒールがバレているようだった。
やれやれと苦笑いして、私のカップも返却口へ持って行ってくれる。
「んじゃ、カラオケコースにするか」
「やだっ!」
「なんで」
「人前で歌えるほどじゃないので…!」
「カラオケなんて、んなもんだろ、素人の娯楽だ」
「そ、それでも、誰かに披露するクオリティにしないと、作詞作曲してくれた方に失礼ですし!」
「プロ意識高すぎだって!」
目を細めて大笑いされ、背中を叩かれながらビルの一角に入っている施設に案内された。
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