第15章 白昼夢幻想曲4(烏養繋心)
「停学したぁ!!?」
数日ぶりに会った彼に、私は大きな声で驚かれた。
自宅謹慎だったが、こっそり抜け出して駅前のカフェで落ち合った。
「なんでまた…」
「その……」
カップを爪で引っ掻きながら私はもごもごと事の顛末を話す。
1週間前の昼下がり、私は1人音楽室でお弁当を食べていた。
それは日課であり、特段変わったことではない。
高校生活も三年めというのに、私は本当に友達が出来なかった。
そして唯一無二の友達と私が思っていたその子が久々に私の前に現れる。
『また1人でここにいるの?
ピアノ以外友達はいないわけ?』
『……いないよ』
半べそだ。
今まで悩みも苦しみも、全部この子に私は打ち明けている。
弱味を全て握られているようなものだ。
『この前のコンクールも大した成績じゃなかったくせに、新聞にまで載っちゃって……マジで目障り』
『……』
仲良くなった切っ掛けは勿論音楽だった。
故に、同じ道を目指していた同士のつもりでいたが、どうやらとんだ勘違いで、人を蹴落とすタイプの子だったらしい。
私はもっと友達を選ぶべきであった。
(選択の余地もなかったわけですが)
『ねえ、最近男と歩いてるって聞いたよ?』
『…っ』
『随分いいご身分だよね?
相手、噂ならあそこの商店のお兄さんでしょ?
よくあんな野蛮そうな人と…』
私の悪口はなんとでも言ってくれて構わない、が、彼に関しては何一つ許せない。
近くにあった指揮棒を思いっきり投げた。
避けようとしたその子はよろけて机に頭を打つ。
『…っ!!』
やった後に、しまった、と思った。
でも抑えることも出来ず、倒れた彼女に馬乗りになって胸ぐらを掴んだ。
『あの人の悪口は、許さない…!!』
そこで、私の手がぬるっと何かに触れたことに気付いた。
真っ赤な、液体。