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【文アル】Could You Love Me?

第1章 可愛い君へ【太宰治】


重厚な扉を片手で軽々と開けたかと思うと、次の瞬間に私はふわふわのベッドに降ろされる。
カチャリと後ろ手に鍵を閉め、ネクタイを緩めながらゆっくりと歩み寄る彼の色気はとてつもなかった。

すすっ、とベッドの脇に来た彼に後頭部に左手を差し込まれ持ち上げられたと思ったら、顔中にキスの雨が降らされる。

その仕方はいつもより激しめで、そして何より性急で。
まるで縋りつくようなものだった。
そんな彼のいつもと違う攻め方に私は居ても立っても居られずに、彼の胸をぐっと押し返してしまった。

「あ…」

茫然とした彼の声がぽろりと口から零れ落ちた。
その途端に彼の表情がみるみると絶望に満ちていく。
『拒絶された』とハッキリと顔に書いてあるのが見て取れる。

「違うんです、違うんです太宰さん。口付けられるのが嫌だとか、太宰さんが嫌いだとかそう言うんじゃないんです」
「じゃあ、なんで…」

生気の感じられない声に焦った私は彼の肩を掴んで押し倒した。
そのまま首筋に自分の顔を埋めて私は続ける。
彼はなにが起こったかわからない様子で、一言も声を上げなかった。

「だって、いつもなら太宰さんはもっと優しいです!…こんなにグイグイ押し進めることなんてない…!」
「………。」
「だから…何かあったら言ってください。不安なことでも悩みでも。私は皆さんの司書だし、なによりも…」

あなたの恋人だから。

言い切って一息つく。
その途端にこれがきっかけで彼と別れたりなんてことになったらどうしよう、果てに彼がまた自殺でもしてしまったらどうしようと言う不安に駆られる。

なにも話さない彼に泣きそうになった時、頭に温かい重しが乗った。
彼の、手のひらだった。

「…なぁ、やっぱさお前はさ、かっこいいって周りからも言われるようなやつの方が本当は好きだったりする?」

その声色には『不安』の文字が見え隠れしていた。
そのまま彼の独白は続く。

俺さ、本当は気づいているんだ。かっこいい、よりもかわいいって言われる方が多いって。
そのかわいいってのも褒め言葉のひとつって言うのも知ってはいるけれど。
でも、男っていうのは弱い立場のやつを守れる強いやつじゃいけないんだ。
少なくとも俺の生きた時代はそう。

それなのに前世の俺はどうしようもなかった。
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