第3章 子供な君へ【坂口安吾】
「え?」
一瞬、本当に何を言われたのか意味がわからなくて彼を振り返る。
そこには見たことのないぐらい、真剣な顔をした彼がいた。
「嘘とかじゃなくて、マジで」
「お前狙ってるやつ多いの自覚しろよ」
いっ、いやいやいやいやいや…それはないでしょう。
私は首を振りながら否定する。
けれど彼は真剣だった。
「いや絶対ないでしょ」
「そんなことねーよ」
「なんでそんなこと言えるのよ」
「?…隙あらばお前を強奪するって俺に喧嘩ふっかけた奴がいるから」
「はぁっ?!」
私は目を見開いた。
信じてねーな、と言う彼に当たり前でしょと返す。
こりゃもうこの機会に洗いざらい話してやるしかねーなァ?
と、言われ腕枕をしてくれた。
どうしようこの体勢すごくドキドキする。
私は内心ドギマギしていると言うのに、彼は照れるそぶりも見せずに話し出した。
(…安吾って照れることあるのかな…見たことないよ…)
お前さ、自分では気がついてないのかもしれないけど。俺の前以外では一切わがままを言ったり、我を張ろうとしたりしないだろ?
だから側から見るとふっつーに「いつもニコニコしていて、優しくて、気遣いの出来る『いいオンナ』」なわけ
時代がら俺らの世代にはそう言う女が良しとされてたし、転生したとはいえその感覚は変わらないやつの方が多い
お前、普段から割と喋る奴以外からは「貞淑な淑女」だと思われてんだからな
それで?結局お前と付き合ったのがグダグダな俺だったから?
「お前にあの子はもったいない」とか、「なんであの子はあんたにしたのか理解できない」とか
挙げ句の果てに「俺の方が彼女をもっと幸せに出来る」とか言い出す奴いるし
ひどいよなー?
そう言って彼は苦笑した。
私は色んな感情が湧き上がってきて、混乱していた。
なんかどれも信じられないような気がするけど。
私は彼をしっかり見つめて話す。
「まず、知っての通り私は淑女なんかじゃないし」
「ああ」
「そんなキッパリ否定しなくてもw…嫌なこととかあると、すぐ安吾に対してぶっきらぼうになっちゃうし」
「うん」
「そんな私の裏の顔を知ってるのは安吾だけだし」
「ああそうだ」
「こんな子供な私のグダグダを見てもまだ好きだって、言ってくれるし」
「そうだな」
「…誰が何を言おうと私は…安吾が好きだし」
「おう」
