第2章 優しい君へ【織田作之助】
「花奈…起きてや…」
ん…
これは夢なのか
「すまへんなあ、黙ってたワシが悪かった。…だから目を覚ましてや」
ぽた、と私の顔に水滴が落ちる。
ああこれは夢なんかじゃない、彼が泣いているんだ。
はやく、この涙を拭ってあげたい。
私はゆっくりと瞼を持ち上げた。
「花奈!」
辺りを見回すと、窓からは夕日が差し込んでいて
「起きて、良かった…」
涙を流す彼がいた。
どうやら私は床に座った彼にお姫様抱っこのまま抱きしめられているらしい。
そのせいで私の顔に涙がぽたぽたと落ちて来る。
「作之助さん、涙しょっぱいよ」
「あああっ」
こんなに慌てた彼も見たことがない。
彼の腕から離されて、私は隣に座り直した。
「花奈、話しても大丈夫やろか」
何から切り出して良いかわからずにいると彼が口を開いた。
私は無言でうなづく。
「まずは…二日酔いだなんて嘘ついてごめん。…本当はちょっと体調悪かってん」
「だから昨日は私の部屋に来なかったんですか」
「そや…けどおっしょはんの花奈に迷惑と心配かけたらあかん思って。安吾にああしてもらたんや」
彼は本当に、本当に申し訳なさそうな顔を浮かべて言った。
そんな事だろうと思った。
明るく振舞って、周りを盛り上げて世話をして。
彼だっていつでも明るく元気なわけがない。弱るときぐらいあるだろう。
不安そうな顔をして私の顔を覗き込む彼に私も話す。
「作之助さんの気遣い、凄く嬉しいです。でも」
私は彼に向き直り、手を伸ばす。
彼の頬に手が触れたとき、彼が息を飲んだのがわかった。
手から伝わる陽だまりのような温かさ。
自分の額を彼の額にくっつけて見つめる。
赤い眼を見開いている彼がちょっと可愛いくて愛おしい。
「そんな気遣い、いらないです。悲しかったんですよ?私」
「いつも元気をもらっている作之助さんを、今度は私が元気にしたいって思っても看病すらさせてもらえなくて」
体調が優れないことも知らなかったって、ショックだったんです
私に心配かけないようにって言うのも、作之助さんの優しさだってことは知ってます
でも、
「私にまで、カッコつけないでください!」
私が言い切ると、彼は破顔した。
そしてクスリと笑って
「ほんま、花奈には敵いませんわぁ」