【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第4章 イブの時間
「なっ」
「あー、俺が初めての相手だから知ってるとかじゃないから安心して。これはマスターから聞いたんだ」
ニコニコ笑うタバティエールに、顔が熱い。
俺はそんな話、一度もしてもらった事ない。
「マスターに召喚されて顕現した時に、メディカルチェックを受けろって言われたんだけど、俺とシャスポーは『人前で服を脱ぐなんて嫌だ』って突っぱねたんだわ。そしたらマスターちゃんがさ、『私も脱いでメディカルチェックを受けるし、結果もカルテと合わせて見せるから一緒に受けて、見せて欲しい』って言われてさぁ。主人にそんなん言われちゃったら断れないじゃん?」
笑うタバティエール。
「で」
俺も素面ではいられなくてシャンゼリゼを飲む。
甘苦い味が喉を通る。まるで俺の今の気持ちみたいだ。冷たくて、苦しい、……でも知らなかったマスターの事を知る甘さ。
「それでマスターちゃんは約束通りカルテもメディカルチェックの結果も読んでくれたワケ。それがさっきの」
「性交経験は無し……」
「そ。ここに来たばかりのは酷い姿だったけど性的暴行は受けてなかった、って事だ」
頷く。
「後、……あの人ともそういう関係じゃなかったって事だな」
タバティエールの言葉に再び顔が熱くなる。
『たぁたん』さんとは深い仲だったけど『そういう』関係ではなかった……って事。
に、安心している気持ちがある。
それを誤魔化したくてシャンゼリゼをグイグイ流し込む。
「そんな飲み方すると倒れるぞ?」
『それ加水無しだからな』と、タバティエール。
確かに喉から胃が汗が出そうな位熱くなってきた。
「熱い……」
「脱ぐか?」
「いや、部屋に帰る」
「はいよ。じゃあ立てるか?」
「あんまり揺すらないで……」
立ちながらテーブルの反対側のタバティエールのグラスを見るけど殆ど飲み干されているのに何で大丈夫なんだろう?
……頭が痛くなってきた。
吐きそう。
タバティエールが腕を取って自分の肩に回してくる。
よろよろしながらキッチンを出た。
タバティエールは片手で鍵を閉めて、二人で宿舎へ歩いて行く。