【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第3章 笑わないマスターがちょっとだけ笑う話
最後にマスターとベスくんが入ってくる。
ベスくんに恨みの視線を送れば彼は申し訳なさそうな目をして見返してきた。
マスターといえば…………んんっ、可愛い。
頬を真っ赤にして期待にキラキラした目でオーブンを覗き見ている。
「悪いな。マスターに話しかけたら邪魔が入ってな」
「ベッシィ」
「ロッタ」
脇を小突き合う。
まあ来てしまったものは仕方ない。
ジャムやらクロテッドクリームを皿に出す。
紅茶はカール達が上手い具合に抽れてくれるだろう。
スコーンは……そろそろ焼き上がりかな?
ミトンをしてオーブンに近付けば、マスターが俺に気が付いて横に退く。
その目が――もう眩しい位輝いている。
お菓子に目がないというのは本当だったらしい。
オーブンを開ければほわんとバターの香りが鼻をかすめる。
「スコーン……」
マスターが言い、出し抜けにそのお腹がぐぅ~と鳴る。どうやらお昼前だったらしい。
前に自分だって好きなのにブリオッシュくれたし、マスターには恩を感じてる。
出来たら気分良くなって、俺も『シャル』とか『ルル』なんて呼んでほしい。